大会教宣展
私鉄総連第90回定期大会教宣展入選作品
第90回定期大会教宣展(22年8月~23年5月31日の間の作成作品を対象)ならびに第53回機関紙講評(22年8月~23年5月31日の間に作成・発行)は、4月上旬より募集対象7部門の作品募集を行い、858点の応募をいただき、審査を行いました。
たくさんのご応募、ありがとうございました。
- 単組紙の部…応募28紙
- 審査員 水嶋 清光((株)広報宣伝総合研究所代表)
- 職場新聞の部…応募67紙
- 審査員 水嶋 清光((株)広報宣伝総合研究所代表)
- 写真の部…応募143点
- 審査員 松本 仁成(写真家)
- 漫画の部…応募36点
- 審査員 上原 章(イラストレーター)
- かべ新聞の部…応募24紙
- 審査員 水嶋 清光((株)広報宣伝総合研究所代表)
- ポスターの部…応募22点
- 審査員 上原 章(イラストレーター)
- 川柳の部…応募538点
- 審査員 刑部 仙太(下野川柳会副会長兼編集局長)
審査の結果、中央執行委員会は、入選38作品を決定。
全応募作品は、大会期間中の教宣展で掲示しました。(川柳は入選作品のみ)
入選した組織および個人は、大会2日目に表彰させていただきました。
本ホームページでは、審査員の総評ならびに入賞・最優秀賞作品を掲載いたします。
単組紙の部
入賞:「私鉄新聞地下鉄」
関東地連 東京地下鉄労働組合
入賞:「京和」
関東地連 京成電鉄労働組合
入賞:「東急バス」
関東地連 東急バス労働組合
入賞:「江ノ電バス」
関東地連 私鉄江ノ電労働組合
入賞:「私鉄阪神」
関西地連 阪神電気鉄道労働組合
入賞:「西鉄組合新聞」
九州地連 西日本鉄道労働組合
職場新聞の部
総評
関西圏の著しいレベルアップに感心 定番化脱却した職場新聞の可能性
審査員 水嶋 清光(株式会社広報宣伝総合研究所代表)
今年の応募は14単組67紙と一昨年84紙、昨年76紙に比べ応募数は減りましたが、応募された職場新聞のレベルはもの凄く高くなっています。
昨年の講評でも書きましたが機関紙の「ニューノーマル」化がさらに進んでいます。従来の機関紙のスタイルから変化し、自由な紙面作りが広がっています。パソコンを始め新しい情報伝達機器を上手く扱える人が増えたため、紙面がとても明るく華やかになり、読みやすくなりました。
同時に紙面に活気が溢れています。その一番の要因は、評者がずっと提唱してきた「紙面に組合員(役員含む)を多数登場させよう」が、定着してきた証しだと思います。会議や集会行事の報告も、何があったかのニュースではなく、参加した組合員の声で伝えられています。それも組合員自身のさまざまな写真入りで。
労働組合の基本は「人」です。人が登場することで伝わる情報への共感・親近感が強まります。それが紙面の活気に繋がっています。
職場新聞はこれまでは「東高西低」と言われ、東日本の単組が牽引していた部分がありましたが、ここ数年その図式に変化の兆しがあります。西(特に関西地連)の躍進が目覚ましいのが大きな特徴です。
「レベルの向上」という点では、関東でもその傾向はみられます。共通しているのは一部の優れた職場新聞が台頭するという形ではなく、レベルアップしている組合は、組織全体で機関紙活動の取り組みに力を入れているのが見て取れます。
今回の入賞紙と甲乙つけがたい紙面が多数あり、審査も悩みました。今回惜しくも賞は逃しましたが候補として挙がった紙面は10紙あります。その中で特に『しのばず』(東京地下鉄労組)『HoTpress』(阪急電鉄労組)『乙訓新聞』(阪急バス労組)の3紙は入賞紙に劣らない素晴らしい作品でした。
職場新聞はこれからもさらに進化していくと期待しております。
最優秀賞:「しん・まるたけ」
関西地連 阪急電鉄労働組合
京都線鉄道支部河原町班
写真の部
総評
撮りたい物のイメージを膨らませ撮影する
審査員 松本 仁成(写真家)
今回の応募数は25単組143作品の応募がありました。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行されたとはいえ、すぐに写真が撮れる訳ではありません。にもかかわらず毎回、前年よりも多くの応募があるということは、みなさんの何かを伝えたいという創作意欲の表れかと思います。
応募数の多い順は中部、関西、北陸の順になりました。関東が少ないのは残念です。作品内容は、みなさんそれぞれ地域の特殊性を生かした題材の捉え方が上手でした。
テーマについても遊び心でなく、何を撮るか目的がハッキリした作品が多くなり、応募するみなさんの意気込みが感じられます。
入選に選びたかった作品のなかで、遠州鉄道の長田さんの作品を例にとって話させていただきます。
「月で降車!?」というタイトルが目に入りました。バス停の名前が「月」でその前にバスが止まっている、タイトル通り面白い被写体を良く見つけたと思いました(長田さん例に出してごめんなさい)。ここで降りる人がいればなお良かったなあと思いました。
そんなに都合よくいくものでもありません。ですがコンテストとなると、この差で選ばれるようになります。
撮影するとき、テーマを見つけたらまず撮って、余裕があるときは発展的な考えを持って、もう一度撮影画面を見直して見ましょう。
何を撮りたいのか、撮りたい物のイメージを膨らませ撮影すると良いでしょう。
最優秀賞:「視線の先には安全運行」
中部地連 アルピコ労働組合
川中島バス支部 貸切分会 金子 浩
漫画の部
総評
テーマが明確かつユニークさが大切
審査員 上原 章(イラストレーター)
新型コロナ騒動は一段落したものの、ロシア・ウクライナ戦争は一向に終息する見通しが立たず、これにともなう世界的な政情不安や原油高といった問題点がある一方、日本国内の急激な物価高による生活苦といった新たな問題点が出てきました。このように題材には事欠かない状況だからではないでしょうが、今回漫画の部は36作品もの応募がありました。
そのなかから今回は最優秀賞として、片平さん(東京地下鉄労組)の作品を選ばせていただきました。優秀賞は受賞常連の中森さん(名鉄労組)、佳作は岩井さん(西鉄労組)と小岩さん(岩手県交通労組)のお二方が受賞となりました。
応募総数の多いこともあり優秀な作品が多く、受賞作品を選択するのにかなり悩みました。今回受賞されませんでしたが、紹介したい作品もたくさんありました。受賞作品との違いは表現方法にあります。受賞作品はいずれもテーマが明確で、かつユニークであることです。漫画の本質を理解されているとも言えます。また、漫画よりもポスターとして作成したほうが効果的な作品も一部見受けられました。
最優秀賞:「領域展開・強制増税」
関東地連 東京地下鉄労働組合
銀座支部 日本橋駅務管区分会 片平 瑠夏
かべ新聞の部
総評
『人』が発する言葉や情報は力強い それを一番実感できるのが『かべ新聞』
審査員 水嶋 清光(株式会社広報宣伝総合研究会代表)
今年の応募紙は昨年より3紙減って、24単組24紙でしたが、応募作品のレベルは高く、見ごたえ・読みごたえがある紙面がたくさんありました。
コロナ禍を反映してか、組合では掲示板を使った情報伝達が改めて見直され、かべ新聞に対する評価も高くなっています。機関紙等を配布する機会が極端に減るなかで、組合員は情報が不足しています。そのため数少ない情報を得るため、掲示板を見る機会が増えたのではないでしょうか?情報を受動的ではなく能動的に見ることで組合員の組合活動に関する当事者感が生まれ始めています。
そうしたことを反映してか、かべ新聞もこれまでの、見せる紙面からじっくり読ませる紙面に変化してきています。応募作品でもキチンと読ませるかべ新聞が目立ちました。
読ませると言っても文字量が多いということではなく、情報量が多いということです。文字以外でも写真・イラスト・グラフ・図表などさまざまな方法で情報を伝えることは可能です。加えて、読まれるための見出しも多くのかべ新聞に付けられていました。
また、人が発信することで伝わる中身がより強くなります。ですので、組合員の写真や声が紙面に登場することは大切です。まずその取っ掛かりとして組合役員が紙面に登場し、自らの声で発信することです。今回最優秀賞に選ばれた『きてき』は紙面作りの上手さだけでなく人の発する言葉の強さを正に体現していました。「労働組合の基本は人」、それをより実感できる媒体がかべ新聞なのです。
今回も優れた作品が多く、実力伯仲で選ぶのに大変苦労しました。岩手県交通の作品は昨年優秀賞。今年はそれを更に上回るものでしたが、今年のテーマである「読ませるかべ新聞」の趣旨から、惜しくも賞を逃しましたが、出来栄えは文句なしの優秀賞以上です。
最後に、惜しくも入賞を逃しましたが最後まで候補として残ったかべ新聞の名前を記して、その努力を讃えたいと思います。
『福島交通新聞』(福島交通労組・須賀川市部)、『かべしんぶん』(知多乗合労組・ガイド分会)、『いいなchan』(伊那バス労組・第二支部)、『うしおに』(宇和島自動車労組・青年協議会)。
入賞作品の優れた試みを参考にし、掲示板を通じた情報共有ツールとして、かべ新聞がさらに活用されることを期待しております。
最優秀賞:「きてき」
四国地連 伊予鉄労働組合
鉄道支部 運輸分会 大谷 潤
ポスターの部
総評
イラストとキャプションによって訴求力を高める
審査員 上原 章(イラストレーター)
ポスターの部は前回と同じ22点の応募がありました。全体の傾向として、以前は多く寄せられていたインパクトの強い作品が少なくなりました。
入賞作品となった6点の作品は、いずれもイラストとキャプションが効果的に配置されていて、ポスターの基本をおさえた作品となっています。
ポスターは見る側がそのポスターから何を感じ取れるのかが最も必要とされるポイントです。インパクトが強ければ強いほど多くの人に関心を持たせることができます。美しさであったり躍動的であったり、インパクトの表し方はさまざまです。次に必要なことは、どうやって共感性を与えることができるか、うったえる趣旨が明確でないと人は理解してくれません。イラストとキャプションによって訴求力を高めることができるのです。
今回の最優秀賞は京福労組の松山さん。優秀賞は阪急労組の髙塚さんと、神姫バス労組の駒井さんお二人の作品に決定しました。佳作は豊橋鉄道労組の森さん、三重交通労組の河合さん、アルピコ労組の宮澤さんの作品を選ばせていただきました。
このほかにも選外となりましたが、南海バス労組の浦井さん、名鉄労組の江崎さんの作品はイラストが印象的でしたが、キャプションや題材の部分で工夫が必要かもしれません。
最優秀賞:「人材は人財」
北陸地連 京福労働組合
松山 千香子
川柳の部
総評
指折り数えて推敲に繋げる
審査員 刑部 仙太(下野川柳会副会長兼編集長)
応募数538句を拝見して感じたことは、「飛躍」という語句を詠み込んだ句が非常に多かったことです。類似句も多く見受けました。コロナ禍で沈滞していた3年間を脱した開放感が、みなさんそれぞれにあったのだろうと推察できます。しかし、そのまま詠んだのでは類似句の中に埋没してしまいます。選者の目を惹くのは、敢えてこれを避けることです。
また、相変わらず五・七・五に収まっていない作品が目立ちました。短詩形文芸は定形で作ることが肝要です。句ができたら、指を折りながら声を出して読んでみてください。上五についても上七までが許容範囲でしょう。上八はいけません。また、下五に六音の名詞を使う方がいますがこれもいけません。六大家のひとり川上三太郎は素晴らしいことを言っています。五・七・五に縮めるのではなく五・七・五に膨らますのだと。蘊蓄に富んだ言葉ですね。
- 最優秀賞
- 「これからだ 仕事次第で 夢開く」
北陸地連 新富観光バス労働組合 吉岡 済
総評
従来の機関紙スタイルに拘らない 情報伝達手段を検討が必要
審査員 水嶋 清光(株式会社広報宣伝総合研究所代表)
今年の応募は9地連28単組で昨年より6紙増え、私が審査を担当して以来最大の応募点数になりました。福島交通労組の「福交新聞」は単組の部では東北地連から初めての応募です。他にも関東で私鉄江ノ電労組、関西で京福京都労組が初参加でした。今回は応募されていませんがこれまでに応募された単組を含めると全部で33の単組がコンクールに参加されるようになったことは、とても喜ばしいことです。
長いコロナ禍を経て、組合員に対する情報共有の重要性・必要性が改めて認識され、その手段としての機関紙の有効性が改めて見直されてきたのだと思います。これは私鉄総連だけに限ったことではありません、労働組合全体に見られる傾向です。
その際に問われるのが、発信される機関紙の情報の中身です。まだ発行される機関紙の多くが従来型の新聞形式の何があったというニュース報道が中心です。ニュースを伝えることが必要ないわけではありません。ただ年間の発行回数が決して多くない現状では、ニュース性が薄れ、終わった出来事の記録的要素が強くなってしまいます。
また、印刷を外部に依頼するため費用や時間も問題となり、発行回数が増えない要因にもなっています。
今回新たに参加された機関紙は組合員の手による手作りです。OA機器や通信手段の急速な進化で簡単に作成でき、かつ送ることも可能になりました。それが情報発信のハードルを下げる効果に繋がりました。
組合にとって重要なのは組合員に情報を発信し共有することです。その意味では、本部の機関紙も従来の新聞スタイルにこだわらない新しい情報発信手段として、見直す時期にきているのではないか、と今回の応募紙を拝見して改めて思いました。