大会教宣展
私鉄総連第89回定期大会教宣展入選作品
第89回定期大会教宣展(21年8月~22年5月31日の間の作成作品を対象)ならびに第52回機関紙講評(21年8月~22年5月31日の間に作成・発行)は、4月上旬より募集対象7部門の作品募集を行い、846点の応募をいただき、審査を行いました。
たくさんのご応募、ありがとうございました。
- 単組紙の部…応募22紙
- 審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
- 職場新聞の部…応募76紙
- 審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
- 写真の部…応募139点
- 審査員 松本 仁成(写真家)
- 漫画の部…応募30点
- 審査員 上原 章(イラストレーター)
- かべ新聞の部…応募27紙
- 審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
- ポスターの部…応募22点
- 審査員 上原 章(イラストレーター)
- 川柳の部…応募530点
- 審査員 刑部 仙太(下野川柳会副会長兼編集局長)
審査の結果、中央執行委員会は、入選38作品を決定。
全応募作品は、大会期間中の教宣展で掲示しました。(川柳は入選作品のみ)
入選した組織および個人は、大会2日目に表彰させていただきました。
本ホームページでは、審査員の総評ならびに入賞・最優秀賞作品を掲載いたします。
単組紙の部

入賞:「東武組合新聞」
関東地連 東武鉄道労働組合

入賞:「京進」
関東地連 京成バス労働組合

入賞:「私鉄京福」
北陸地連 京福労働組合

入賞:「私鉄名古屋」
中部地連 名古屋鉄道労働組合

入賞:「私鉄新聞南海版」
関西地連 南海電気鉄道労働組合

入賞:「私鉄新聞阪急版」
関西地連 阪急電鉄労働組合
職場新聞の部
総評
職場新聞の『ニューノーマル』が かなりのスピードで浸透の気配
審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
昨年は新型コロナウイルス中でも過去最大の14単組85紙と応募がありました。今年は少し応募が減りましたが13単組76紙と52回の歴史のなかでも3番目に多い応募になりました。
コロナも3年目に入り、人々の意識の変化が出てきました。同時にコロナで生活様式が大幅に変化し、仕事や暮らしのなかで「ニューノーマル」化がはじまっています。
労働組合運動も例外ではなく、従来型の活動がほとんどできないなか、運動のスタイルも大きく変化せざるを得ません。この2年間ほぼ従来型の運動ができなかったまま役員交代の時期を迎えます。このことにより、さらに運動の継承が難しくなります。
そんななか、今回拝見した職場新聞に大きな変化が見られました。それは、丁寧に作成された読みやすい職場新聞が増えたことです。
組合活動の幅が減ったことで伝える中身は少なくなった反面、時間的な余裕ができたこと。組合員との接点が極端に少なくなったなかで、職場新聞の重要性が再認識されています。唯一の伝達手段である職場新聞に組合員が興味を持ってもらうために、読みやすく分かりやすい紙面を作ろうという努力の跡が見て取れます。
と同時に、作り手の思いが込められた紙面も多数見られました。また、昨年の講評で指摘しました女性編集者の活躍は、今年はさらに輪が広がったようです。
今回も力作が多く、入賞紙を6紙に絞るのに苦労しました。またここ数年連続入賞は止めているため、惜しくも入賞に至らなかった紙面が多数あったことを記しておきます。
職場新聞の「ニューノーマル」も遠い話ではないと痛感しています。

最優秀賞:「しおかぜ」
関東地連 臨港バス交通労働組合
塩浜支部
写真の部
総評
構図やテーマの捉え方が向上 次回の新たな挑戦に期待
審査員 松本 仁成(写真家)
今回の応募数は24単組139作品の応募がありました。
コロナ禍が続き疲弊しているなか、これだけ多くの応募があり感謝しています。
応募の特徴は職場に関係する作品が多かったこと、なかでも目を引いたのは観光バスが数十台整列して写っている作品です。よく見るとバスの形や、ロゴが違うので、これだけ多くのバスが休まざるを得ない状況であることは悲しいものがあります。
そのようななか、最優秀賞になった、ジャストライン労働組合の青井さんの作品は、整列した人を配し、バスとの一体感が増して、このような状況下にも負けずに立ち向かっていく力強さを感じさせてくれました。
また鉄道関係では利用者の減少から、労使一体となって集客に努力している姿に感動しました。優秀賞の上毛電気鉄道労働組合の小泉さんの作品は、多くの人たちが黙々と作業している姿、虎のぬいぐるみの多さにビックリしましたが、その数だけ皆んなの気持ちが入っていると思うと納得させられます。
デコトレイン電車を走らせることで、お客さんを楽しませることに、真剣に取り組んでいる姿が心地よく表現されていました。
今回は良い作品が沢山ありました。全体的に構図の取り方が向上してきたこと、テーマを考え作品を作っている様子がわかるようになりました。これをふまえ次回に向けて新たな挑戦をして見てください、楽しみにしています。

最優秀賞:「整列」
関東地連 ジャストライン労働組合
相良分会 青井 和久
漫画の部
総評
次回に向けポスターと漫画の違いを勉強
審査員 上原 章(イラストレーター)
漫画の部は全部で30作品の応募がありました。そのなかから今回は最優秀賞として、入賞常連となった中森さん(名鉄労組)の作品を選ばせていただきました。
優秀賞はおもしろい視点の作品をつくった小野さん(秋田中央交通労組)が初受賞となりました。佳作は受賞常連の菊池さん(岩手県交通労組)と清水さん(南海労組)のお二方が受賞となりました。
今回は新型コロナに加え、ロシアによるウクライナ侵攻があり、それをテーマとした作品も多くみられました。一方日本の政界に視点を移せば、アクが強かった安倍元首相や菅前首相から比較的まともに見える紳士然とした岸田へと首相が代わりました。何ら効果的な政策を打ち出したわけではなく、むしろ相次ぐ商品の値上げにより生活が厳しくなっているのに、なぜか支持率は高水準のままといった不合理が続いています。このように、今、漫画の題材はたくさんあります。
長尾さんと藤田さん(東京地下鉄労組)、前田さん(東武鉄道労組)、永田さん(濃飛乗合自動車労組)、湯淺さん(西鉄労組)、この方々の作品はよくできていましたが、漫画ではなくどちらかといえば、ポスターの内容だと思います。ポスターと漫画の違いを勉強されることを願います。

最優秀賞:「歯車を止めて!」
中部地連 名古屋鉄道労働組合
本社事業支部 鉄道事業本部分会 中森 孝
かべ新聞の部
総評
自らの生活を守るため組合活動だけでなく 交通産業・労働者のあるべき形を提案
審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
今年の応募紙は昨年より3紙増えて、27単組27紙。数的にはまだまだコロナ前の応募数にははるかに及びませんが、応募作品のレベルは高く、見ごたえ・読みごたえがある紙面がたくさんありました。
コロナが長期化するなかで組合の活動はもとより会社の事業活動も大きく変化してきました。昨年はそのなかで組合ができる活動や情報の発信。そしてそれらを共有するためのあたら活動の模索をする組合が現れましたが、今年はさらに、自分たちの生活を守るために、会社や事業のあるべき形についても言及するものが多数見られました。
そのためか、例年に比べて見せる紙面のかべ新聞よりも、しっかり記事(メッセージ)を読ませる紙面が増えています。
また、「何がありました」「何を行います」の告知や報告的なものではなく、組合や組合員の考えや意見を明確に発信し共有する内容に変わってきました。
今年の特徴としてあげられるのが丁寧な紙面作りです。時間をかけじっくりと作り込んだ紙面が多数ありました。皆で集まってワイワイ作るスタイルはまだ再開できていませんが、その分担当者がじっくり細部にわたって細かく丁寧に作成された紙面は見ていて楽しく、また、相対的にレベルが高くなったことを実感します。それは52回を重ねた私鉄総連の大会教宣展でのかべ新聞コンクール活動の積み重ねの成果だと思います。
今回も昨年以上に優れた作品が多く、実力が伯仲していたため選ぶのに苦労しました。最後に、惜しくも入賞を逃しましたが最後まで候補として残ったかべ新聞の名前を記して、その努力を讃えたいと思います。
『にいざ』(東武バス労組・新座分会)、『新富新聞』(新富観光バス労組)、『かべ新聞』(知多乗合労組・本社分会)、『もりかげ』(名鉄労組・鉄道中部支部金山分会)、『クラッチ』(南海バス労組)。
今回の入賞作品の優れた試みを参考にし、「組合員の未来のために前を向く」情報共有ツールとしての「新たなかべ新聞」として、来年のコンクールに多くの作品が応募されることを期待しております。

最優秀賞:「きてき」
四国地連 伊予鉄労働組合
鉄道支部 運輸分会 大谷 潤
ポスターの部
総評
あらかじめよく考えて構想を練ることが大事
審査員 上原 章(イラストレーター)
ポスターの部は全部で22点の応募がありました。今回も前回同様、これはといった強いインパクトを残すような作品が見られなかったことは残念です。
入賞作品と選外となった作品とでそれほど大きな違いはありませんが、あえて違いを述べるとするなら、ポスターの必須要素(インパクトの強さやアイデアとオリジナリティの有無)が入賞作品により多く見られたことです。講評で何度も書いてきましたが、そのポスターを見た人が何を感じるのかということをあらかじめよく考えて構想を練ることが大事です。何をどうやってアピールしたいのか、ラフでもいいですから下書きができたら近くの人に感想を求めてみてください。
最優秀賞は秋田中央交通労組の奈良さん。優秀賞はアルピコ労組の宮本さんと、南海バス労組の浅井さんお二人の作品に決定しました。
佳作は名鉄労組の江崎さん、岐阜乗合自動車労組の村上さん、阪急タクシー労組の田中さんの作品を選ばせていただきました。
選外となりましたが、東濃鉄道労組の中島さんの作品は題材としてポスターではなく、漫画として応募してもらえれば受賞の対象になっていたでしょう。

最優秀賞:「辻󠄀元清美に吠えさせろ!!」
東北地連 秋田中央交通労働組合
奈良 善美
川柳の部
総評
指折り数えて推敲に繋げる
審査員 刑部 仙太(下野川柳会副会長兼編集長)
前回の88回は課題「歩く」でしたが今回の89回は「未来」です。短歌は五七五七七の三十一音字で詠みます。いわゆる三十一文字(みそひともじ)と言われるものです。俳句と川柳は五七五で詠みます。この三種が短詩系文芸と呼ばれるものです。
また同じことを申し上げますが、相変わらず中八や下六の句が多くて困ります。89回の応募数530句を基礎にパーセンテージで示してみました。中八の句が29%・下六の句が18%ありました。また昨今の世を反映してコロナの句が22%ありました。
五七五の形に詠むのが正当な定型詩ですが、句切りが五五七・七五五・八九・九八の十七音字に収まるものも定型の範疇と見なされています。句ができたら声に出して読み上げながら指を折って数えて下さい。単に字数の確認だけでなく何か気付くこともあるはずです。それが推敲に繋がる場合もあり、句の完成度が高まるということです。
- 最優秀賞
- 「この先も 続くレールに 歴史あり」
関西地連 南海電気鉄道労働組合 運輸第一支部 南海線乗務分会 高尾 将太郎
総評
組合活動の理解と浸透のカギは 『コト』から『ヒト』への変化か
審査員 水嶋 清光(仕事と暮らしの研究所コミュニケーションフォーラムマスター)
今年の応募は、7地連22単組で昨年とほぼ同水準でした。応募総数は変わりませんが、今年も応募された単組の入れ替わりが目立ちます。
コロナによる行動制限で、組合の行事や諸行動も大幅に制限されています。今年に入り少しずつ会議や行事も再開されはじめましたが、長きにわたる活動制限で、組合の活動を体験できていない新人組合員も増えるなど大きな影響が出ています。
そんななか、昨年の講評でも触れましたが、掲載される記事の傾向が少し変化してきたように感じます。一番の変化は紙面に登場する人が、組合員・役員を問わず増えたこと。従来の「コト(行事)」を伝えるから、「ヒト」を通して「コト」の理解を深めるスタイルが多数見られました。組合活動ができないことで組合員の組合への興味・関心は薄れます。それを補うのが、「人」の存在です。「人」を通じて感じる共感・一体感です。
組合員の登場のさせ方で秀逸だったのが、東京地下鉄労組の『地下鉄』です。寅年にちなみ虎ノ門駅・虎ノ門ヒルズ駅周辺の紹介や、キャンプやサバイバルができる都内のお店を組合員自らが体験し紹介しています。一般組合員がメインで紙面に登場する事例は、私鉄のなかではあまり見かけなかったので新鮮でした。新たなスタイルのお手本になりそうです。
『地下鉄』以外にも組合員の登場の仕方に工夫を凝らした機関紙が今回の入賞紙のなかにも多数ありました。レクや青女部活動に限らず、組合の活動を浸透させ推進するのは「人」です。実践する機関紙がさらに増えることを期待しています。